Flycam5000「Comfort Arm & Vest」大改造の巻


これ*1です。
この出品者さんからスタビライザー無しのアーム&ベストを買いました。
左の画像のセットそのものです。

FLYCAMやGLIDECAM*2とはスタビライザーの固定方法が違うので、赤い矢印で指示した部分を作り換えました。
ここはまぁ当然というか、購入前から解っていたことなんで、購入後躊躇なく即製作しました。
構造は事前に解っていても、使い勝手は出来上がるまで解らないので、あれやこれやで結局3パターンぐらい作りました。
当初の予定ではここを作り換えるだけでOK、あとはデフォの状態で即撮影に使えるはずだったんですが、世の中そう甘くはなかったです。
ウチの環境は、カメラ+スタビライザーで2.5kgなのですが、2.5kgの重量物をセットしてもスプリングがまったく伸びないのです! 
試しに3.1kgまで重量を増やしてみた*3んですが、それでもダメ。
スプリングのテンションをゆるめにゆるめゼロにしても微動だにしません。

スプリングが伸びなきゃクッション性はゼロ。振動を吸収するどころか増幅する役目しか果たしませんから、そんなんだったら無い方がマシです。
でもね、もう買っちゃったしね。安いったって4万円弱したんですからね、そのまま置物にするわけにもいかんので、スプリングを交換して様子を見ることにしました。
んがしかし、そう簡単にスプリングが交換できる作りじゃないんですよ。
まず最初に赤い矢印で指示した部分のボルト*4を外さなきゃならんのですが、キャップの六角穴がデタラメで、3〜4回付け外ししたら穴がバカになっちゃいました。
中華人民共和国製モーターサイクルのキャップボルトもそうでしたが、どうも第三世界の六角穴はガバガバでダメです。
ちなみに、緑の矢印で指示した部分がベアリング(の端)です。

キャップボルトを外せばスプリングが交換できるわけではありません。
スプリングの末端が接続されているスライダーがまた曲者でして、リベットどめなのでリベットの片端をぶっ壊さないとスプリングが外せないのです。
でもって「スプリングを交換する」といってもですね、どんなサイズのスプリングを買えばいいのか解らないし、そもそも適合するスプリングが手に入るのか?もよく解りません。
けどまぁ、そこは気合でなんとかしました。というか、なんだかんだでスプリングを7本も買いました。
標準品を6本買って全滅→泥縄でバネ定数を勉強しメーカーに特注品製作を依頼。7本目でやっと強さが合うスプリングにたどり着いた次第です。
ぶっちゃけ、スプリング代だけで結構な額になりました。んん・・・

あとは、ハンドルが回し難い*5のでノブスターに交換。ついでに長ネジをステンレス製に交換。赤い矢印で指示した部分ですね。
でもって緑の矢印で指示したカラー*6の作りが悪く、段差があるのに何の対策もなされていなかったので、ステンレスでカラーを製作。




で、これでOKかというとさにあらず。まだまだ動きが悪い。
で、どうしたかというと、またアームをバラバラにし、ベアリング回りをグリスアップしました。
ベアリングはシールドタイプなので、本来であればグリースなんか塗る必要はないはずなんですが、なんとグリースをベタベタ塗りまくったら動きが劇的にスムーズに!
作りが素晴らしすぎて、ベアリングがまともに動作してないんでしょう・・・・・

で、これでもうOKかというとそうでもなく、今度はですね、動きが良くなってから判明したのですが、アームの取り付け角度に問題が。
それ相応の額の製品だったら角度調整機能が付いている*7んですが、なんせ極端な廉価品なもんですから、調整機構はばっさりカットされています
「アームの取り付け角度ってなんだよ?」という方はこの動画*8をご覧ください。
んで、何がどう問題なのか?と申しますと、簡単に言えばですね、取り付け角度が悪いとアームの動きが制限される恐れがある。んですよ。構造的にですね。

ということで対策。と書くと簡単ですが、ここは4パターンも製作*9したので物凄く時間がかかりました。
0度から25度の範囲で無段階で調整できます。私は12度ぐらいで使ってます。




これで現状「まぁ、こんあもんだろ」と納得できてます。もちろん本家マーリン用のアームとは比べ物にならない性能でしょうが、値段が値段ですからね、「ある程度役に立つ」ぐらいで満足すべきなんだと思います。




Flycam5000「Comfort Arm & Vest」の購入時の注意点
1) カメラ+スタビライザー=3kg程度*10ではアームは動きません。バネ定数から察するに、カメラ+スタビライザー=5〜6kgはないと振動を吸収しない*11と思います。
2) スプリングの交換には、スプリングの知識と金属加工のスキルが必要です。
3) 可動部のグリスアップ必須です。グリスアップのためにアームを分解する必要がありますが、それ相応の知識と工具が必要となります。




「製品」だと思うとやり切れないので「素材」を買うつもりで臨みましょう。

*1:オークションのページは短期間で消えるので魚拓を使いました。他意はないよ。

*2:作っているところは同じで、製造元直売のブランドがFlycamだ。とかどっかに載っていたような記憶がある。

*3:重いほうが安定するので現状そのまんまにしてあります。

*4:画像のボルトは交換後の国産品です。M4キャップボルトの首下長8mmです。

*5:でもこの部分はまだいい。ベストにアーム末端を差し込むソケットを固定するハンドルは、3回付け外ししたら樹脂製のツマミが折れた。

*6:画像のカラーは私が作った対策品。

*7:Flycamでも2段アームの製品はそうなっているらしい。

*8:勉強になる動画をいっぱい掲載してくださっているBANKINYAさんの素晴らしい作品です。

*9:ほとんど「開発」の勢いです。本体に手を加え初期状態に戻れなくなるのが嫌なので、私は「ワンオフのボルトオンパーツ」しか作りません。

*10:ステディカム・マーリン+DMC-GH1だとトータル重量は2kg前後らしい。その組み合わせでは軽過ぎてアームは動かない。

*11:2010年08月13日の金曜日訂正:購入時そのままの状態ならそうだと思う。改善策をこちらに提示。