森繁久弥氏といえば

「日はおぼえていないが、終戦直後、放送局で甘粕さんに会った」と森繁久弥が語るのは、この日のことであろう。当時の森繁は新京放送局の職員で、満映文化映画のナレーターを勤めたこともあった。
「廊下ですれちがうと、珍しく甘粕さんの方から『森繁君』と声をかけてきて、『満州はよかったなあ』と握手をした。私はとっさに − あ、甘粕さん、死ぬんだな − と直感した。だが何もいわなかった。何もいえなかった」と森繁は私に語った。「トコトンまで信頼できる、本当にいいオヤジさんだった。と、森繁は甘粕を懐かしむ表情になった。「満州という新しい国に、われわれ若い者と一緒に情熱を傾け、一緒に夢をみてくれた。ビルを建てようの、金をもうけようのというケチな夢じゃない。一つの国を立派に育て上げようという大きな夢に酔った人だった」
甘粕大尉 - 角田房子(著) 中公文庫版 P298より

思い出すのは↑のエピソード。 R.I.P.