組事務所眼

わたくし、若かりし頃に4年ぐらい花屋でバイトしていたのですが、新宿区の生花店だったもんですから主な配達先が歌舞伎町でして、当然顧客もそっち方面の方が多く、というかほとんどソレ系で、組事務所への配達は日常茶飯事でした。
ダボシャツ着た蟹みたいな体型のおっさんが昼間っから雀卓囲んでるトラッドスタイルの組事務所(事務所番が若かりし頃の島田紳助氏そっくりだったり)から、全員デザーナーズブランドのスーツでバシっときめた経済ヤクザのオサレ(でも提灯はアリ)な事務所や、在日半島系の方々が詰める緊張感溢れる組事務所(迷路のような雑居ビルの奥の奥にあった)まで、そりゃぁもう数多くの組事務所を見たもんです。組事務所訪問回数だったらビジター様方誰にも負けない自信があります。
人間面白いモンで、そういうところばっかり配達に行っているうちに「組事務所眼」っていうんですかね? 別に看板を見なくても、建物を見ただけで「あれは組事務所だ」とわかるようになりました。言語化はできないんですが、なんなく臭気というか匂いというか、建物から発せられる独特の雰囲気を掴めるようになったのです。
もう20年ぐらい前の話しですけど。
で先日、市南西部の新興商業地域の一角で、その懐かしい「雰囲気」を感じる建物を発見したのです。見た感じは「普通の民家+同じ敷地内に小さな事務棟」で、敷地内に停まっている車もマーチなんかもあって(セルシオが一台あったけど)極々普通。普通の人がみたらなんとも感じない極々普通の建物だと思うんですが、あの懐かしい「独特の臭気」をがんがん感じました。
「ん? もしかして・・・・」とは思いましたが、だからといってチャイムを鳴らし「ここは組事務所ですか?」と訊ねるわけにもいきませんので、確認の術はありませんからね、「たぶんそうだろ」とは思いつつ前を通り過ぎました。
で本日、その建物の前を通ったらですね、その「独特の臭気」を発する民家の敷地内にパトカーが2〜3台停まっておりまして、事務棟玄関前に長い棒を持った警察官の方々が何人もいるじゃないですか。ついでに、玄関先で警官に対応している方々の風貌が、もう絵に描いたような暴力団構成員。
わが「組事務所眼」、未だ衰えず。